新型コロナウイルス感染症の流行(以下、コロナ)に伴う在宅時間の増加によって、特に小学校低学年の近視が増えた可能性があります。
中国・肥城市(山東省)の10の学校で、6~13歳の学童合計12万3535人を対象とする眼科検診が、2015年から2020年まで毎年行われました。2019年までは学期が始まる9月に、2020年は1月から5月までコロナの影響で学校が閉鎖されていたため、6月に眼科検診が行われました。
近視の強さは「D(ディオプター)」という単位で示します。すべての年齢において近視は年々増えていましたが、6歳児では2015年から2019年の5年間で-0.06D近視が進んだのに対し、2019年から2020年の1年で-0.32Dも近視が進んでいました。同様の傾向は7、8歳児でもみられましたが、9歳以上の児童ではその傾向が弱くなりました。
2020年の近視率は、6歳児ではほかの年の約3倍(21.5%)に増えました。7歳児で約2倍(26.2%)、8歳児で約1.4倍(37.2%)に。9歳児以上では近視率に大きな差異はありませんでした。
学校の閉鎖期間中、小学1、2年生は1日1時間、3~6年生は2.5時間のオンライン授業を受けていました。中・高学年の児童に比べ、デジタル機器を扱う時間が短かったにもかかわらず、低学年のほうが近視になりやすかったことから、年少の子どもほどデジタル機器の扱い、または外出機会の喪失が近視進行に影響を与えたのではないかと考えられています。
研究者らは、外出自粛を余儀なくされる環境下において、親は子どもがデジタル機器を扱う時間を可能な限り管理し、ソーシャルディスタンスを保ちつつ屋外での活動時間を増やす必要があると述べています。
参照論文:JAMA Ophthalmol. 2021 Mar 1;139(3):293-300.