バイオレットライト透過メガネで子どもの強度近視が改善

太陽光に豊富に含まれている光、バイオレットライトを透過させる「バイオレットライト透過メガネ」を装用し、屋外での活動時間を長くすると、強度近視でも改善傾向がみられることを慶應義塾大学医学部眼科らのグループが世界で初めて報告しました。

バイオレットライトとは紫外線の手前にあたる波長360~400nmの紫色の光です。屋内で使われる蛍光灯やLEDライトにはほとんど含まれておらず、現在流通しているメガネ・コンタクトレンズや、車・オフィスなどの窓ガラスはUVカットなどによって紫外線と一緒にバイオレットライトもカットされていることが多いため、取り込みづらい光であるとも言われています。

上記で報告された症例は、両眼とも-5D※1を超える中等度~強度近視で、左右の目の度数が大幅に異なる「不同視」のため、より度数が進んだ方の目の視力が低下している「不同視弱視」の4歳男児です。治療開始時、右目は-5.75D、左目は-9.75Dでした。何も行わないと近視がより進行している左眼が使われなくなるので、治療のために日中は1日6時間、右眼をアイパッチで遮蔽しました。加えて、バイオレットライト透過メガネを装用し、1日に最低2時間屋外で過ごしてもらいました。

治療開始2年後、遮蔽のためにバイオレットライトを浴びた時間が短かった右眼は脈絡膜※2の厚さが4.9μmしか厚くなりませんでしたが、バイオレットライトを浴びた時間が長かった左眼では115.7μm厚くなりました。右眼の眼軸長※3は0.85mm伸び、-1.02D近視が進行しました。左眼の眼軸長は0.20mm短くなり、+1.88D近視が改善しました。


右眼と左眼でこのような違いがみられたのは、バイオレットライトを浴びた時間の違いによるものと推測されます。今後は症例数を増やし、さらに検討していきたいと研究者らは述べています。

※1 D:近視の度数はD(ディオプター)という単位で示す。近視の分類は以下の通り。
弱度近視  -0.5Dから-3.0D
中等度近視 -3.0Dから-6.0D
強度近視  -6.0Dを下回る

※2 脈絡膜:網膜の外側にある膜で、強度近視では薄く正常では厚い。脈絡膜が厚いと近視が進行しにくくなると考えられている。

※3 眼軸長:目の奥行きのこと。眼軸長が伸びると近視が進行する。

 

参照論文:Am J Ophthalmol Case Rep. 2020 Dec 11;20:101002.

坪田一男
監修者プロフィール
坪田一男
医学博士(眼科学)
株式会社坪田ラボ代表取締役CEO
慶應義塾大学名誉教授