バイオレットライトが近視の進行を抑える仕組み、マウスで確認

網膜の神経細胞にあり、視覚には関与しない光受容体の「OPN5(ニューロプシン)」が可視光に含まれるバイオレットライトを受光すると、近視の進行が抑えられることが慶應義塾大学医学部眼科らのグループによって示されました。近年の近視率の上昇は、屋外活動時間の減少に伴うバイオレットライト不足が一因と推測されます。しかし、バイオレットライトが近視の進行を抑制する仕組みは、詳しくわかっていませんでした。

可視光の中で最も波長の短い360~400nmの光、バイオレットライトには近視を抑制する作用があるというのは、実験的に近視にしたヒヨコや近視のヒトを対象とする過去の試験で示されています。※1※2
研究グループはまず、実験的に近視にした近視モデルマウスでも1日3時間バイオレットライトを照射すると、近視の進行の指標となる眼軸長の伸びが抑えられることを確認しました。また、近視が進行すると薄くなってしまう脈絡膜(網膜の外側にある膜)の厚さは、バイオレットライトの照射によって薄くなるのが防げました。

一方、網膜の神経細胞にあるOPN5の遺伝子を働かなくした近視モデルマウス「OPN5ノックアウトマウス」では、バイオレットライトを照射しても眼軸長の伸びが抑えられず、脈絡膜が薄くなるのも防げませんでした。

OPN5は網膜の概日リズムや眼内の血管発生、深部体温の調節に関与する光受容体として知られてきました。今回の試験により新たな生理機能が明らかになり、OPN5をターゲットとした近視の予防や治療法の開発に役立つ可能性が示唆されました。

※1 EBioMedicine.2017 Feb;15:210-219.
※2 Sci Rep.2017 Nov 6;7(1):14523.

参照論文:Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jun 1;118(22):e2018840118.

坪田一男
監修者プロフィール
坪田一男
医学博士(眼科学)
株式会社坪田ラボ代表取締役CEO
慶應義塾大学名誉教授